種々の昆虫に対するコパイバオイルの忌避活性

区分
none

●チャバネゴキブリに対する忌避活性
内部側面にワセリンを塗った直径30 cm×高さ15 cmのプラスチック容器内に光を好まないチャバネゴキブリのシェルターとして、アルミ製の皿(直径11.5 cm 高さ3.5 cm)を裏返しにして設置した。その際、アルミ皿の2ヶ所を切り抜いてチャバネゴキブリの出入り口とした。
容器内にチャバネゴキブリ(Blattella germaniaca)(雄の成虫、卵鞘なしの雌の成虫、及び幼虫を各10匹ずつ、計30匹)を放ち、餌・水を与えたまま明条件化で24時間馴致した。馴致後には誘引性を防ぐために必ず容器内のフンを全て除去した。次に、アセトン処理を施した5 cm×5 cmの正方形の濾紙表面に供試サンプルを2%にヘキサンで希釈した液剤0.5 ml塗布した処理区(処理量:6.69 mg/disk)と、溶媒のみを0.5 ml塗布した無処理区を設置し、それぞれをシェルター内に入れ明条件下で4、24、48時間後の数を測定し、忌避率を算出した。なお、2時間後の測定時には試験の直前に餌・水を取り除きそのまま連続で測定し、4時間後の測定後に餌・水を与えた。また、24、48時間後の測定時には測定30分前に餌・水を取り除き忌避率を算出した。

図1

表1

図2

試験の結果、コパイバオイルにはチャバネゴキブリに対して高い忌避活性が認められた。また、比較対照として用いた他の精油は、試験開始から時間が経つにつれて忌避活性は大きく減退するが、コパイバオイルの活性は試験開始から48時間が経過した後も高い水準を維持した。

●ココクゾウムシに対する忌避活性
プラスチック製のカップにココクゾウムシ(Sitophilus oryzae)を入れ24時間絶食させた。忌避試験に用いる濾紙の底敷きの部分には、アルミカップ(直径3.8 cm 高さ1 cm)の底から2~3 mmのところで切り抜いたものを用い、同アルミカップをトンネル状になるようにカップの側面を2ヶ所切り抜いたものを上から被せるものとして使用した。
コパイバオイルを1%にヘキサンで希釈し、ヘキサン処理を施した直径3.6 cmの濾紙に0.2 ml塗布した(処理量:1.32 mg/disk)。処理した濾紙を底敷きの部分に載せて押麦0.6 gを置き、上からトンネル状のカップを被せてこれをシェルターとして用意し、処理区とした。同様に、溶媒のみを0.2 ml塗布したものを用意し、無処理区として比較対照した。
穴を開け、金属メッシュで蓋をした長方形のプラスチック容器に先ほどのトラップを設置し、絶食させたココクゾウムシ20匹を放し、暗条件下で24時間後の数を測定して忌避率を算出した。

図3

表2

穴を開け、金属メッシュで蓋をした長方形のプラスチック容器に先ほどのトラップを設置し、絶食させたココクゾウムシ20匹を放し、暗条件下で24時間後の数を測定して忌避率を算出した。

●ヒトスジシマカに対する忌避活性
表3に示す割合(mg)で害虫忌避成分(コパイバオイル、DEET)を秤量し、クロロホルムに溶解させて全量を100 mLに調整した。それぞれ2 mLを10 cm×10 cmの綿布(金巾)に含浸させ、室内で2時間乾燥させて試験用検体を作製した。各試験用検体を6 cm×6 cmの大きさに裁断し、これを甲の部分に5 cm×5 cmの穴を開けたニトリル手袋の穴の部分に裏から貼り付けた。このニトリル手袋を装着し、拳を握った状態で供試虫の入ったケージの中に5分間差し入れ、時間内に試験用検体の上に飛来し、吸血した個体数を計数した。以上の操作を検体ごとにケージをかえて3反復で実施し、忌避率(%)の平均値を求めた。なお、飛来とは、飛来後翅をたたんで停止または歩行する状態を意味する。また、吸血とは試験用検体に口吻を差し込んだまま停止する状態を意味する。結果を同じく表3に示す。
供試虫としては、累代飼育中のヒトスジシマカ(Aedes albopictus)の蛹150個体を腰高シャーレに取り、30 cm×30 cm×30 cmの網製ケージ内で羽化させ、羽化後10日間2%砂糖水のみで飼育し、吸血飢餓状態にした成虫を使用した。

表3

表3から、DEETを単体で50 mg用いた場合【D】よりもコパイバを単体で同じく50 mg用いた場合【E】の方が、飛来・吸血ともに忌避活性が高いことがわかる。また、コパイバとDEETを組み合わせて用いた【A】は、使用量が計100 mgであるにも関わらずDEETを250 mg用いた場合【C】よりも高い忌避活性を示した。

●トビイロウンカに対する忌避活性評価
栽培したイネ幼苗に対し、アセトンで1%に希釈したコパイバオイル3 mLを噴霧し、ペットボトル容器を加工したものを上から被せた。トビイロウンカ(Nilaparvata lugens)成虫20匹を容器内に入れた後、脱脂綿で上部を塞ぎ、一定時間後において、イネを吸汁していない個体数を測定し忌避活性を評価した。吸汁していない個体が多いほど忌避効果が高いと判断した。また、試験中に排泄されたトビイロウンカの排泄物(甘露)の定量化による忌避活性評価も同時に実施した。これは、コパイバオイルを処理したイネ幼苗をトビイロウンカが忌避していれば、排泄される甘露量も自ずと少なくなり、無処理の場合における甘露量との比較によって活性を評価したものである。

図4
図5
コパイバオイルを処理したイネに対して忌避行動を示した個体数の計測や、排泄甘露量の比較から、コパイバオイルはトビイロウンカに対して忌避活性を有することが明らかとなった。

引用文献
市原慶代ほか, 環動昆 22(3), 121-127(2011)
森川瞬ほか, 環動昆 22(2), 99-104(2011)
特許公開2008-127360 株式会社リフレ(2008)